ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
「俺の方で日程を決めるか?」

「そこまでお願いしていいの?」

「俺は最近電話で話したから、みちるほど緊張はしない」

「頼もしいなあ」

 みちるは弱々しく笑う。

 もう少しゆっくり話がしたかったが、そろそろタイムリミットだ。

「蒼斗、仕事の時間だから行かないと」

「いやっ」

 蒼斗はムッと顔をしかめる。

「ママとバトンタッチだ」

「いやいや!」

 いつも俺が家を出て行くまで泣き叫ぶ声はやまない。その後みちるがなだめているはずだが、大変な役割を任せてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「いいよ蒼さん、遅刻するといけないから行って」

「いつもすまない」

「心を許せている証拠だからいい傾向だよ」

 澄み渡った空のようなカラッとした笑顔は、先ほどまで見せていたものとは比べものにならないほど清々しい。

 本心だとわかり内心安堵しつつ、もう少しこの場に残り、ふたりと時間を共有したいと切なさに駆られてしまった。
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