ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 訝しい目を向けたが、莉々沙先生はにこやかに微笑んだままでいる。

「実は父から、改めて大槻先生とお見合いをしたらどうだ、と言われたんです」

 莉々沙先生の父親はこの常盤総合病院の院長にあたる人。俺の耳にはまったく入ってきていない話だが、本当なのだろうか。

「莉々沙先生はどう答えたんだ?」

「えっ……えっと、それもいいですね、と」

 乗り気というわけか。彼女は三年前も同様の反応を見せていた。

 同じ脳神経外科医だし理解し合える部分は多い。年齢も六歳差と程よい。なにより多忙で出会いが少ない分、手近なところで手を打とうという心理は同調できる。

 だがそれは、俺に決まった相手がいなかったらの場合だ。

「だからみちるに声をかけたのか」

 莉々沙先生はわかりやすく瞳を揺らして動揺を露わにした。

「今も昔もそういう話があるけど、気にしなくていいと伝えてくれたんだろう?」

「いえ、そういう話は……」

 困ったように、お腹の辺りで重ね合わせた両手をもじもじと揉んでいる。
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