ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
「蒼さんは蒼斗が好き?」

「もちろんだ」

 言下に返ってきて胸が温かくなると同時に、鋭利な刃物で切り裂かれたような痛みが走る。

「子供の成長はあっという間だよね。二度と取り戻せない、かけがえのない時間を奪って、本当にごめんなさい」

 言いながら泣きそうになった。頭を深く下げて洟をスンッと啜る。

 逆の立場だったら耐えられない。目を瞑ればこの二年間に見せてくれた蒼斗のいろいろな表情が絶え間なく瞼に浮かんでは消えていく。彼にはこの記憶がない。

「みちるが悪いんじゃない。そうさせた俺に責任がある」

「違う」

「頼むからひとりで抱え込まないでくれ。たしかに蒼斗の成長を見守れなかったのは残念だが、今の蒼斗を見ていれば、みちるがたくさんの愛情を注いでいたのが伝わってくる。どんな日々だったのだろうと想像するのも楽しいよ。……大変だっただろう。よく頑張ったな」

 労わるように頭を撫でられて、堪えていた涙が粒になってテーブルの上に落ちた。

 優しくて包み込まれるような手のひらから、よしよし、という声が聞こえてきそうだった。
< 159 / 193 >

この作品をシェア

pagetop