ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 脳出血発症一ヶ月前後は容態によって安静にしていないといけないが、その後は少しずつリハビリを開始する、とも。

 聞きたいことは山ほどあったのに、先生を前にしたらなにも言えずただうなずくことしかできなかった。

 部屋を出て、ナースステーションの近くの壁に貼られている掲示物を眺めていると、女性看護師たちの会話が耳に流れ込んできた。

「大槻先生って本当に体力あるよね。朝から緊急手術で呼び出されて、そのまま勤務にあたっているし。一昨日も夜中に呼び出されて手術して、そのあとは医局にこもって論文書いていたんだよ」

 大槻先生って、さっき私に話をしてくれた母親の主治医だ。ということは、朝から呼び出されたというのは母親の手術についてだろう。

 なんだか居たたまれなくなり、ここから移動しようと後ずさりをする。

 でも初めて訪れた病院なのでどこになにがあるのかわからない。

 えっと、院内マップは……。

「大槻先生以上に腕がいい脳外科医はいないからね。どうしても頼っちゃうのは私でもわかる。患者も含め院内の人間から信頼が厚いし、看護師にも優しいし、非の打ち所がないよね」

 入院説明のときに手渡された院内マップに目を落としながら、つい聞き耳を立ててしまう。
< 17 / 193 >

この作品をシェア

pagetop