ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 そんなに立派な先生が手術を行ってくれたんだ……。最善を尽くしてもらったんだから、きっと大丈夫だよね。

 不安で張り裂けそうになっていた胸が少しだけ楽になる。

「それであの容姿って、パーフェクトすぎるよ」

「大槻先生には、できればこのまま独身でいてもらいたいなぁ。どうにかなりたいなんて思っていないけど、やっぱり、ね」

「だね~」

 意味ありげに語尾を濁した言葉のあとに、看護師たちの愉快げな笑い声が響く。

 つい先ほど顔を合わせた大槻先生の顔を思い出そうとしたが、物腰がやわらかい雰囲気だったことしか覚えていない。

 緊張と不安で平常心ではいられず、先生の顔をちゃんと見られなかったのだ。

 ほんのり色めきだった看護師たちの声は大音量で鳴り渡ったナースコールで遮られ、忙しそうに動きだした彼女たちと同じく、私もようやくその場をあとにした。

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