ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 毎日五分の電話は欠かさずしていても、伝えきれていないことの方が多いので会話は弾んだ。

 幸せな時間にどっぷり浸っていたところで、蒼さんが急に真剣な表情を作って見つめてきた。

「みちるに大切な話があるんだ」

 口のなかにあったものを咀嚼して、ごくりと喉を鳴らす。

 ただならぬ気配に声を発せずにいる私を見据えて、蒼さんは緊張した面持ちで話し始めた。

「実は、以前より希望していた海外研修の話が入ってきたんだ」

 海外というワードに心臓がドクンッと不快な音を立てた。

「アメリカのハーバード大学って聞いたことはあるか?」

「それは、もちろん」

 ドッドッと鼓動が速くなり、ちゃんと呼吸ができているのか怪しいほど胸が息苦しい。

「そこのマサチューセッツ総合病院へ行こうと考えている」

「……どれくらい?」

「三年半の予定だ」

 ガツンと鈍器で頭を殴られたかのような衝撃に襲われる。
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