ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 平日の十一時前の待合スペースは、予想していたより混雑しておらず人はまばらだった。

 受付の目の前にあるソファに腰掛けて、スタッフから手渡された用紙に必要事項を記入しているところへ蒼さんがフロアに姿を見せた。

 百八十二センチという高身長で、モデルのようにすらっとした体格で顔もいいものだからとにかく目立つ。

 歩き方が上品で無駄な音を立てず静かにこちらに近づいてくる。

 視線が絡むと蒼さんは目元をほんのり細める。自分の意思とは関係なく胸が高鳴り、慌てて立ち上がって、受付の前で残りの数項目を記入してスタッフへ提出した。

 ソファへ戻ると蒼さんはすでに座っていて、私を射るように見つめている。痛い視線から逃れようと彼の大きな手に目をやれば、パックジュースが握られていたので抱っこ紐から蒼斗を下ろした。

 彼の隣に座らせると、目ざとく見つけたものに蒼斗は目を光らせる。

「ちょーだい」

 短い腕をお目当てのものに一生懸命伸ばしている姿は、誰が見ても心を奪われる仕草だ。可愛らしくてどうしたって頬が緩んでしまう。
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