ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 ふたりが暮らす家は、三年前にみちるが住んでいたマンションから変わっていなかった。

 昔玄関前まで送っていったことはあるが部屋には上がっていない。

 母子ふたりで暮らせる間取りなのか? 引っ越せないほど生活に窮しているのかと心配になる。

「お客さま用の駐車場が空いているから、そこに停めてもらっていい?」

「誰が訪ねてくるんだ?」

「誰って……私が借りているわけじゃなくて、マンションに住んでいる人たち全員のお客さま用だよ」

 みちるはなんとも言えない顔をして説明をする。

「なるほど」

 それに対し俺はひと言返すことしかできない。

 みちるの部屋を訪ねる男がいるのかもしれないと考えたら、つい嫉妬心をさらけ出してしまった。

「自転車は俺が帰るときに移動させておくから」

 まず先にふたりを部屋に連れていきたい。

 荷物は俺が持ち、傘もふたりの上にさしたまま歩くと、蒼斗を抱っこしているみちるが微笑んだ。

「ありがとう。助かる」

 この程度でお礼を言われる自分が情けない。

 俺に尽くされるのをあたり前だと思ってほしいし、もっと優しくさせてほしい。その権利がほしい。
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