ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 それから五分も経たないうちにみちるが部屋から出てきた。

「即寝だった。かなり頑張らせちゃったなあ」

 気が抜けたのか、疲労を滲ませた顔で虚空を扇ぐ。

「本当にごめん。一分だけちょうだい。ちょっと休憩」

「もちろん」

 目を瞑って深呼吸する横顔を静かに眺めた。

 十三時を回ったところだが、昼食はまだだろう。そんな暇はどこにもなかった。

 パチッと目を開けたみちるは、そろりとうかがうように俺に視線をよこす。

「……気持ちの整理もしようかなって思ったけど、一分じゃ無理だ」

 へらっと愛想笑いを浮かべた顔はあきらかに困っていて、俺がこの表情をさせている原因だと考えると胸が息苦しくなる。

「お母さんは元気にしているか?」

 まずは当たり障りのない話題から持っていこう。みちるの母親についてはずっと気になっていた。

「ビックリするほど元気だよ。リハビリを一生懸命やったおかげで前の職場に復帰したし、ひとり暮らしも続けているの」

「それはよかった」

 ひとつの話題が終わり、次はなにを聞こうかと僅かな沈黙が落ちる。
< 87 / 193 >

この作品をシェア

pagetop