ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
「保育園は近いのか? いつも自転車で送り迎えしているんだろう?」

「近いよ。五分くらいかな」

「……さっきの溝口さんというのは? 母子家庭の部屋を訪ねてくる男性というのがどうしても気になってね」

 これも話しやすい話題だろうと思って尋ねたのだが、みちるは深い皺を眉間に刻む。

「溝口さんはね……」

 言葉を切って、フレーバーティーが入ったマグカップを口に運ぶ。ひと息入れてから、みちるは順序立てて話し始めた。

 父親が借金を背負い、それを理由に両親は離婚したが、数年前から母親とみちるのもとにまで借金取りがやって来るようになったそうだ。

 理由は、アルコール依存症の父親がアルコール性肝障害を患い、治療を始めたため借金返済にまで手が回らなくなったからだという。

「でも母には支払い義務がないし、溝口さんが来ても絶対に一銭も出さないでと伝えてある。溝口さんには、私に支払い義務が生じたらきちんと払うから、それまでは関わらないでほしいと何度もお願いしているの」

 すべて初耳だ。みちるを取り巻く環境に頭が痛くなった。
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