ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
「もう一度聞くが、お母さんの方は大丈夫なのか?」

「うん。アパートの大家さんがいい人でね。私から事情を話して、溝口さんを見かけたら追い払ってもらうように頼んであるの。おじいちゃんだけど、かなり大柄で威圧感があってね」

 みちるは説明しながら、ふふふっと笑う。周りに親切な人がいるようで安心した。

「見かけたら私の方に電話ももらえることになってる。でもやっぱり心配だし、三人で暮らせるところを探した方がいいのかなあとか、いろいろ迷っちゃって」

 なるほど、とうなずいた。

「なあ、みちる」

「ん?」と小首を傾げる仕草が可愛い。

「俺は三年前から変わらずみちるが好きだ。俺とやり直してほしい」

 なんの脈絡のない告白に、だんだん緊張を解いてやわらかくなっていた表情がぴしりと固まった。

「今さらだと責められて当然だと思っている。でもどうしても君を諦められない」

 みちるは困惑した色を瞳に滲ませ、ついと顔を逸らして隣の部屋に視線を送る。みちるの頭には今蒼斗の姿が浮かんでいるのだろう。

「もちろん、蒼斗のことも大切にする」

「蒼斗は……」

 言いかけて口をつぐんだみちるは、唇を噛むように引き結んだ。

 俺の息子だろう、と詰め寄らないのは、この告白が父親としての責任を感じているからだと受け取られたくなかったからだ。
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