ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 避妊はしていたが、授かりものだから誰が悪いというものでもないし、もちろん責任は取る。だが蒼斗の存在をそんなふうに扱いたくない。

 純粋に、みちると蒼斗を愛したいだけなんだ。

 もしかしたら、みちるは俺の思考を読んでいるかもしれない。それでも蒼斗がふたりの間にできた子供だと口にしないのは、隠したい理由が存在しているからだ。

 何故なのか気になるが、無理やり真実を吐き出させたくないという想いもあり、あえて追及を避けた。

「もう一度チャンスをくれないか。俺のマンションで一緒に暮らそう」

「へっ?」

 気の抜けた声を無視して、矢継ぎ早に俺の考えを伝える。

「例の溝口という男から蒼斗を守るためには最適な環境なはずだ。駅から近いからみちるも通勤しやすいし、保育園への距離もさほど変わらない」

「ちょっと待って。その前に、蒼さんのマンションってどこにあるの?」

「前と同じだ。新しく探すのが面倒だったのと、あのマンションはいろいろと便利で気に入っていたからな」

 常盤総合病院からみちるのマンションへ行く途中に、俺が住むマンションがある。

「あのタワーマンションか……」

 ひとり言なのか、蚊の鳴くような声でつぶやいて再び黙り込んでしまった。
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