ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
「みちるは消した?」

 平静を装って尋ねたが内心かなりビクついている。会話をしながら揃って立ち上がり玄関まで移動した。靴を履いている俺の背中にみちるは返事をする。

「消してないよ」

 願っていた言葉が返ってきてホッと胸を撫で下ろし、振り返って微笑んだ。

「よかった。それならまた連絡がほしい。俺からも電話する」

「わかった」

 ドアノブに手をかけて扉を押し開ける。途端にザアーッという激しい雨の音がした。

「どうしよう。自転車……」

「駐輪場にちゃんと置いておくから気にするな」

「でもこれじゃあ蒼さんがびしょ濡れになっちゃう」

 最悪、一旦家に戻って着替えればいいだけの話だ。

「みちるは気を遣いすぎ。俺には甘えていいんだよ。それは今も昔も変わらない」

 安心させるように、みちるの頭にポンッと手を置く。久しぶりに触れた髪はやわらかく、指を食い込ませて梳きたくなった。
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