誕生日
今日なんですよ!!!!
っていう視線を送る。
そんなに
グイグイいけない自分が
情けない…
友達とさ
『うちは毎日記念日だからねー
毎回ちーくん祝ってくれるよ』
昨日話したばっかり……
「ん?」
「えっ…あ、なんでもないよ
買い物行ってくるね」
「んーいてら〜」
チラッと顔を出しただけ
すぐ自分のことに集中してる…
入って来ないでって言われたけどさー
気になりすぎる…
というか
自分の誕生日に自分でご飯作るって…
「なんなのよ…」
虚しくてイライラしてしまう。
しかも何かわかんないけど
朝からずっと部屋に篭ってるし
「ケーキ…」
スーパーで売ってる
小さなショートケーキやチーズケーキ
「好きなもの今日くらい…いいよね。」
いつも我慢するけど
今日くらい何言われても良い!!!
「ただいまー」
-チン-
珍しい
キッチン使ってるの……
「さっくん?
ごめん、お腹すいたよね」
「あ!!!いや大丈夫!!
まだごはんいらないよ
あとキッチン来たらダメ!!!」
「買い物したから
冷蔵庫とかにしまいたいんだけど…」
「テーブルに置いておいて!!
おれ片付けるから」
「…わかった
用事済んだら言ってね
ご飯作るから」
「んーわかった、わかった」
買ってきたものを
テーブルに置く
その袋の中から
買ってきたケーキを出す
「一緒にたべよと思ったけど……」
ベランダに向かう
茜色の空がなんだか寂しかった。
-カラカラ-
「うーっさむっ。」
ベランダの椅子に座る
たまにボーッとするために用意したもの。
「しょっぱ……」
いつの間にか
涙が溢れてきていた。
こんなに近くにいるのに
なんで……
「みさー」
部屋の中から呼ぶ声がした。
慌てて私はほっぺたを吹いた
「ここにいたの
つか…さむっ、はよ部屋入りなさいよ!」
大きな手が私の手を引っ張る
「あっ!!」
-ベチャッ-
膝にのせてたケーキが
滑り落ちた。
「……」
「えっ?わっ…ごめん」
バタバタと奥に走って行ったかと思ったら
ティッシュ箱を持って戻ってきた。
「服よごれてない?」
気が抜けた私はボーッとしている
さっくんは
テキパキと私の足元を片付けてくれている
「ごめんね。みさの為におれさ……」
また涙が頬をつたう
「みさ?えっ…おれ
ごめん…え…
とりあえず入ろ。」
いつも一緒にいるソファーに座る
テーブルに置いておいた荷物は
片付いていた。
その代わりに
さっくんが作ってくれた
大好きなホットミルクが置いてある。
「ごめん。
おれ泣かせるつもりはなかったの」
さっくんの眉がいつもより下がってる
大きなあったかい手が
私の手をずっと包んでくれている。
「ちょっと待ってて」
部屋に戻っていくさっくん。
すぐに帰ってきた
「みさ?手かして」
手を取られ
スっと何か付けられた
「えっ…これ…」
えへへと隣で
照れくさそうに笑う
「おれが忘れてるわけないだろ。」
キラキラとシルバーのリングが
左手の薬指で光っている
「売り物みたいにうまくないけど
おれのお嫁さんになって欲しいなって思いながら一生懸命作った。」
「ばか」
ぽんと
胸を叩く
「みさ?
おれにも見せて」
さっくんのほうに手を差し出す
隣には大きな手が
その指にもシルバーのリング。
「めっちゃ難しいなこれ」
へへっと笑う。
なんかさっきまでの
イライラとかさみしい気持ちが消えていく
「あっ!ご飯………」
「大丈夫!!きて」
ダイニングテーブルいっぱいに
私の好きなものが並んでて
しかも真ん中にはケーキ
「これ……どうしたの?」
「おれ作った!
ケーキは違うよ。美味いといいんだけど…」
向かいあわせに座る
さっくんがお皿によそってくれる
「みさ、はっぴーばーずでぃ。
おめでとう。あとありがとう」
また涙が溢れてくる
「また泣いてる、ほら」
ティッシュで
涙を拭ってくれる
「さっくんありがとう。
幸せすぎだよ」
「ご飯食べて食べて
冷めちゃう」
私の大好きなオムライス
1口頬張るとトマトの甘酸っぱさが
口の中で広がる
「良かったぁー」
私の表情で読み取ってくれる
笑顔でずっとこっちを見てる
「さっくん大好きだよ」
「しってるー!!ほらいっぱい食べてよ」
指にはキラキラ光るシルバーリング
テーブルにはキラキラしている料理
私の目の前には
大好きな人。
魔法使いなのかな…
一瞬であったかい気持ちになった
今度は私の番!!!!
めちゃくちゃ一生懸命がんばるんだから。
またこの笑顔みたいから。