一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
「由那ちゃん!」

振り返ると原島さんが立っていた。
原島さんは細身のデニムにTシャツ、上から麻のジャケットを羽織っていた。
カジュアルだけど彼にとても似合っている。
スタイルの良さが引き立つ、シンプルだけどおしゃれさが際立つ。腕に巻かれたガッチリとした時計が彼を引き立てているように思う。
私は原島さんのスタイルに魅入ってしまい、何も言えずに固まってしまった。

格好良すぎるよ…

「由那ちゃん、いつもと雰囲気違うね。すごく可愛い。いや、いつもも可愛いんだけど」

「……原島さんはオシャレですね。すごく似合ってます」

「由那ちゃんもすごく似合うよ。俺たちのいつもとちょっと違うから、なんていうか緊張するな」

私は頷いた。
本当にその通り。
いつもと違いすぎて緊張する…。

「なんか俺たちの服装、似てない?」

たしかに……
形は違うけれどお互い履いているのはデニム。
私のシフォンのカットソーはオフホワイトでカーディガンは淡い黄色。バッグは紺色のシンプルな麻で編んでいるバッグだ。
原島さんはジャケットの下は白のTシャツ。

色合いも素材も似ている。

原島さんにそう言われて恥ずかしくなり俯いてしまった。

「暑くなってきてるしどこかお店に入ろう。誘っといて申し訳ないんだけど俺あんまり店とか知らなくてさ。さっきネットで見たらパールビレッジホテルのビュッフェでハワイフェアとか言うのがやってるらしいんだ。そういうのはどう?少し海外に行った気分で充実した休みになりそうじゃない?」

「いいですね。本当のハワイには行ったことないですけど雰囲気だけ味わえますね」

「あぁ。俺たちにピッタリだと思ってさ」

私はやっと「ふふふ」と笑いが込み上げてきて固まっていた力が抜けた。

「俺もハワイに行ったことはないよ。ハワイがどんなものかリサーチしに行ってみよう」

電車で3駅隣にあるホテルへ向けて移動した。
原島さんは私の歩幅に合わせてゆっくり気味に歩いてくれているのがわかる。
本当によく気がつく人なんだな。
< 14 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop