一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
お店は混んでいたがさほど待たされることもなく案内され、2人ともハワイに行ったことはないので本当にハワイのものかもわからないが料理を取りに行った。

山盛りにのった彼のお皿を見て私は驚いた。

「そんなに食べれるんですか?」

「もちろん。全然大丈夫だよ。由那ちゃんは少なすぎない?」

「残したくないから少しずつ取ってきます。だからまだまだ食べますよ」

私は何度か席を立ち取りに行くが思ったほどの量は食べられない。それは原島さんの前で食べるからかもしれない。
席で向かい合いながら食事をすることにとても緊張していたが、それは最初だけだった。
彼の話すことは興味深く、またとても面白かった。話し上手なのかもしれない。

「由那ちゃんと話しているととても面白いよ。話が尽きないな」

「原島さんが話し上手なんです。私も原島さんと話してると時間が経つのを忘れそうです」

料理を食べることもそこそこに私たちはつい話し込んでしまった。

随分と長居してしまったようでランチの時間はそろそろ終わり。
もちろんお腹はいっぱいだけどまだ原島さんと話していたいと思った。

「由那ちゃん、この後映画でも行かない?さっき話してたのをこのまま観に行かない?」

「え?」

「もし嫌じゃなければ、だけど」

「行きます!」

私は即答した。
原島さんとの時間が嫌だなんてわけがない。
今までこんなに男性と長く話したことがなかった。
いつの間にか緊張が解け、話が弾むようになったことが信じられないくらい。
先ほど話していた映画はまだ公開を迎えたばかりの話題作。しきりにテレビでも番宣しており興味をそそられると言ったら原島さんも行きたいと言っていた。お互い映画が久しぶりだけどこの作品は観ておきたいと思うって話が盛り上がった作品。無人島に1人取り残された主人公を探しに恋人が奮闘するというもの。生死が分からない中、生きているということだけを信じて探し求める。一方で恋人のために帰る道を探し続ける主人公。2人の相思相愛の物語だがラブストーリーだけでは収まらないスケールの大きい作品になっているらしく番宣を見るたびに行きたいと思っていたものだ。
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