一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
ぽんちゃんママが最近見つけたお店について話を聞きながら並んでお散歩していると急にキキがグイグイとリードを引っ張った。

キキは物珍しいものがあるとふらっと行きたがることはあってもこんなにリードを引くことは珍しい。

「キキ、どこいくのよぉ」

ぽんちゃんママと分かれ私はキキの興味のある方へと連れていかれる。

珍しく公園の外周を回るコースの方へ向かっていった。

私はぐいぐいと引っ張られてしまい林を抜け、外周ルートは出るとちょうど男性がジョギングしているところに出くわした。
キキはその男性に付かず離れず一緒になってジョギングしているようだった。

「キキ、もう走れないよ。ストーップ」

私が声をかけるがキキは気にする様子もなくしっぽを振り走ろうとしている。

グイッとリードを引くとキキはガッカリしたように止まってくれた。

「キキ、珍しいね。また今度走ろうよ。もう今日は無理だよ〜」

キキは座り込む私の顔を舐めるとしっぽを垂らし残念そうな顔をしている。

あの顔を見ると走ってあげたいけど、これ以上走ったらバテて仕事に行けなくなりそう。

キキを宥めて帰ろうとすると、キキがついて回っていた男性が近づいてきた。

「あの……俺と1周走りに行くかな?まだ時間が大丈夫なら俺のジョギングに付き合う?」

キキはその男性の顔を見るとしっぽをはち切れそうに振り回して足元にすり寄っていった。

え?

「あの、もしよければ10分くらいで回ってきますよ」

「いいんですか??」

「もちろん。犬好きなんだけど飼えなくて。だからもしこの子が付き合ってくれるなら嬉しいな」

「ありがとうございます。私さっき走ったので疲れちゃって。これ以上だと働きに行けなさそう。でも大丈夫ですか?」

「あぁ。いつもあと1周回って終わるんだ。だから大丈夫。リードを貸して。行ってくるよ」

そういうと朝日を浴びながら颯爽と駆け出していった。
キキは飛び跳ねるように喜んで彼にについていった。

2人の後ろ姿を横目に私は近くのベンチに座り、彼らが戻ってくるのを待った。近くに自販機があり飲み物を買っておいた。
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