一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
あの日から度々散歩であって、休みが一緒の日にはお昼を食べるようになった。

冬哉さんは不規則で土日でも仕事がある日があるみたい。
私は基本土日が休みだけど、休日当番に当たる日は出勤しているので平日が休みになることもある。
そんな日がたまたま冬哉さんと重なる日もあり月に2回くらいは一緒に過ごすようになった。

お互いの話をすることもあり、私は冬哉さんが男兄弟の長男だってことも読書が好きなことも、アウトドアが好きで魚釣りが好きなこともたくさん知ることができた。

反対に私のことも知ってもらえて、それでも尚一緒に過ごす時間が楽しくて仕方ない。

私は9月になり遅めの夏休みに入った。
変わらず散歩に出かけると今日は冬哉さんがいる日なのかキキが外周コースへと走り出た。
もう走り出ても驚くことはなく、冬哉さんがいる日なのかな?と思う程度。
キキがどうしてわかるのか不思議だけど、キキからは大好きというオーラが出ているので、その素直さに微笑ましくなる。

「おはよ!」

「おはようございます」

そういうと冬哉さんからいつもと同じように手を出され、私もキキのリードを預けた。
9月になったけれどまだ陽が出てくると暑さを感じる。
こんな中、定期的に走ってる冬哉さんは凄いなといつも思う。

10分でいつものように戻ってくるとベンチで休憩タイム。

「今日は由那ちゃん休みなの?」

「今日から6日間の夏休みです。みんな交代で夏休みを取るので遅くなったけどやっと夏休みなんです。冬哉さんは夏休み何しました?」

「俺も交代で取るんだけど今回は細切れで8月に2日間、9月に3日間なんだ。ちなみに9月は明日から」

「いいですね。9月だとどこも少し空いてますしね」

「由那ちゃんは何するの?」

「9月だからこそみんなと予定が合わなくて今年は週末に飲みに行くだけです。9月の夏休みって良し悪しですよね。あ、でも兄に買い物に連れて行ってもらうんです」

「そっか。なら明日からのどこかで遊びに行かない?もう仕事だから行くけど都合のいい日を後で教えて。じゃ、ごめん。そろそろ行くわ」

そう言い残し、また走り出してしまった。
もう7時になろうとしていた。

久しぶりの冬哉さんとのお出かけ。
ゴールデンウィーク以来、なんとなく出掛けられずにランチに行くことが多かったのでちょっとだけドキッとした。

どこに行くんだろう。
人の多いところには正直行きたくないな。
冬哉さんはなんと言おうとも、私は今のこの雰囲気が好きだから他人の目に振り回されたくないな。

家に帰り、落ち着いたところで冬哉さんへメッセージを送った。
明日明後日なら大丈夫、ということだけ。
楽しみだけど、楽しみだけじゃない。
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