一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい

日常

「こちらのお部屋になります。後ほど担当看護師が来ますのでパジャマに着替え、荷物をしまいながらお待ちくださいね」

私は今日入院の患者を外来へ迎えに行き、荷物を持ち病室へ案内した。

総合病院の入退院は目まぐるしい。
最近は外科的なオペがあっても大抵2週間もいることなく退院になる。脳神経外科でさえ急性期を過ぎたらリハビリ病院へと転院となる。
私のいる内科も2週間で一区切り。
救急で来た人も1ヶ月いるかいないかだと思う。
そのため私たちの仕事も毎日追いかけっこのよう。
今日月曜日は特に多忙を極める。
週末に入退院があった場合その手続きに加え、保険請求の書類、その上入院患者の計算もしなければならない。50床の管理を任され走り回ることとなった。

お昼になりやっと座ることができた。
月曜日はやっぱりキツイ。
疲れたなぁ。
今朝キキにつられてジョギングしなくてよかった。
そういえば今朝の男の人はあんなに走って凄かったなぁ。鍛えてるんだろうな、なんてふと思った。
すでにジョギングしていたのに更にキキともう1周してしまうなんて凄いな。あんなに走って仕事行けるのかしら。

病棟にある休憩室で食事をしていると看護師もみんな順番に休憩し始める。
各々が「疲れたわ」と言いながら入ってきて、その度に「お疲れ様です」と声をかける。

最近忙しくてみんなソファに座るとなかなかお弁当を温めるためにまた立ち上がれない。

「コーヒー淹れますか?」

「由那ちゃんいいの?すごく嬉しい」

私は立ち上がりサーバーからコーヒーを注ぐ。

「ごめんね、みんな忙しいのに。ありがとう」

「いいんですよ。私は今お弁当食べたら少し復活しましたから」

看護師はコーヒーを口にするとやっと立ち上がりお昼を食べ始めた。

みんなこの仕事をしている限り暇なことはないので休憩が取れないこともある。
私は自分の仕事を順序立ててできるけど看護師たちはそういうわけにいかないこともある。
そのため私は出来る限り些細なことでも手伝えたらいいなと思っている。

「由那ちゃんはいい嫁になりそうだよね」

「そうですか?でも今のところ行く予定はないんですよね」

「そうなの?彼氏いるかと思ってた」

「いないんですよ」

そんな話をしてると他の看護師も入ってきて私の彼氏の話になる。みんなで合コンしよう、と盛り上がったところで私は休憩が終わりまた病棟のデスクへ戻った。
午後も病院内を歩き回りやっと定時を迎えた。

毎日自転車で15分の距離。
家と病院との往復で彼氏なんて出来るわけないよね。
返って、忙しい看護師に彼氏のいることが不思議でならない。
なんでみんなには彼氏が出来るんだろう。

私は今日もいつも通り。自転車に乗り込むと家へと帰っていった。

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