一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
「ねぇ、外科の原島先生って知ってる?」

病棟で仲良しのナースに聞いてみた。

「もちろん知ってるよ!あの長身でイケメン、さらには跡取りドクターでしょ。性格もいいし、適齢期の人は職種構わずアタックしてるらしいよね。今のところ誰にもなびかないらしいけど。由那ちゃんも気になっちゃった?」

「そんなことないの。ただ、お兄ちゃんと一緒に働いてるって聞いたから……」

「そっか。同じ外科だもんね。実物見た?私も何回かしか見たことないけどカッコよかったよー。それにさ、オペがとにかく丁寧なのに早いらしいのよ。オペ中に急変してもみんなを落ち着かせてリードしてくれるってオペ室の友達も絶賛してた。焦って怒鳴りまくるドクターも多いらしいけど原島先生はそんなことないんだって」

私が聞かなくてもどんどん教えてくれる。 
それくらいの有名人だったってことなのね。
私が知らなかっただけで、ちょっと話を聞いてみただけで病棟が違うのに冬哉さんのことが分かるって凄い。

聞けば聞くほど凄い人だってわかった。
私の想いを口にしなくてよかった。
友達のままでよかった。

冬哉さんはみんなからも迫られるくらいの人気だから私には最初から期待を持たせないように友達宣言されたんだ。

そう思うと腑に落ちた。
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