一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
***
まさか由那ちゃんがクラークだったなんて本当に驚いた。
科が違うと病棟も違うと全然会わないから気が付かなかった。
もしかしたらすれ違ったりしてたのかもしれないけどお互いいつもと格好が違うから分からなかったのかもしれない。
そもそもここにいると知らなかったらそういう目で見てないし仕方ないのかもしれない。

でも、まさか……。 

それにいつも可愛いと言っていた健介の妹だったなんて。

健介と一緒に働くようになり、いつも妹の話を聞かされていた。
上の階に行くといい会いに行ってるのも、ご飯に誘って喜んで帰ってきたりしょげたりしているところも見ていた。
仲がいいんだな、とは思っていたが一緒に行こうと誘われてもそこまでの興味はなくいつも断っていた。

今日俺を見た彼女の顔は驚き、少し引きつったような表情をしていた。

改めて話をしたいと思ったが呼び出されその場を離れるしかなかった。
医者だと隠すつもりはなかったが彼女にまた引かれるのが怖かったからいい出せなかっただけなのに、最悪の知られ方になってしまった。

自分から言い出すべきだった。
他人から聞いたりする前に自分からさらけ出すべきだった。

由那ちゃんにメッセージを送ったが既読になるが返事はこないままだった。

まさか、とは思ったがやはり翌朝から散歩でまた見かけなくなってしまった。
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