一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
家に着くと玄関でへたり込んでしまった。

冬哉さんに告白をされたという実感が湧いてくるとともに、なんの取り柄もないただの事務員の私が冬哉さんと付き合っていいわけがないという卑屈な気持ちに押しつぶされていた。

キキが不安そうに覗き込んできて、私は抱きついた。

涙がとめどなくこぼれ落ちてきた。
冬哉さんに会いたい。
あんなこと言いたくなかった。

冬哉さんが私を好きって言ってくれた言葉を信じたい。
でも冬哉さんの好きがずっと続くなんてわからない。

自信が欲しい……。

ぎゅっと手を握りしめ、自分を奮い立たせるようになんとか立ち上がった。

部屋にこもり、どれだけ泣いていたことだろう。

ふと気がつくとスマホが点滅していた。

見ると冬哉さんからのメッセージだった。
恐る恐る開いてみると彼の誠実な言葉が綴られていた。

【由那ちゃん、さっきは驚かせてごめん。俺はこの数ヶ月、由那ちゃんと過ごす時間がどれほど楽しかったことか分かる?俺は公園に走りに行くのか、由那ちゃんに会いたいから行くのか分からなくなるくらいだった。由那ちゃんの屈託のない笑顔にどれだけ癒されたか分からないだろ。この仕事をしてるときついと思うこともたくさんある。けど由那ちゃんと過ごすことが俺の安らぎだった。由那ちゃんは前に俺の見た目で一度一緒に過ごすことを躊躇っただろ。だから俺はどんなことをしてでも由那ちゃんのそばにいたくてあがいたよ。気がついてた?俺はもうとっくに由那ちゃんのことが好きだよ。医者とかそんなのは忘れて、俺自身を見て考えてくれないか?】

メッセージを読み続けるとまた涙がこぼれてきた。
なんて想いのこもったメッセージなんだろう。
私だってもうとっくの昔から冬哉さんのことが好きになってる。
冬哉さんの隣にいたい。
私からも手を伸ばしてもいいのかな。

冬哉さんがここまで私に気持ちをぶつけてきてくれた。
私も素直になりたい……。
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