一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
翌朝の散歩にも冬哉さんはこなかった。
こうして大変な仕事をしていたからジョギングの日がまちまちだったんだと改めてわかった。

キキも今日は来ないことがわかるのか噴水の周りを散歩している。

「あ、由那ちゃん!」

「ぽんちゃんママ、おはようございます」

「由那ちゃーん、彼氏できたの?昨日手を繋いで散歩してたからドキドキしちゃったわよ」

私が固まっていると、ぽんちゃんママは笑いながら、

「若いっていいわねー。羨ましいわ。お似合いだったわよ。2人とも幸せそうで私までニコニコしちゃったわ。ウフフ」

「お似合い、ですか?」

「うん。お似合いだったわよ。イケメンに可愛い由那ちゃん。雰囲気もなんだか似ているっていうかね。きっとお互いのことを大切に思ってるんだろうなって感じたわ。彼の由那ちゃんを見る目が甘くておばちゃんまでドキドキしちゃった」

「え?」

「甘かったわよー。いいわね、若いって」

ぽんちゃんママに見つかって恥ずかしかったけど、お似合いって言われ正直とても嬉しかった。それに冬哉さんからそんなふうに見られてたなんて気がつかなかった。
昨日はもういっぱいでまともに目を合わせた気がしない。
私が見上げてみたら冬哉さんはどんな顔していたんだろう。

ぽんちゃんママと分かれ、家に帰る途中て冬哉さんからメッセージが来た。

【おはよう。まだ散歩?俺は結局帰ったのが9時で、由那の言いつけ通り早く寝たけど、寝坊して今起きたよ。ジョギングに行かなかった〜。ごめん】

【おはようございます。よく寝れてよかった。実は私も昨日夕方からぐっすりで、それで朝起きてこれたんです。一昨日から緊張して眠れなかったから緊張の糸が切れたみたいです】

【俺もだよ。一昨日あんまり寝れなかったから昨日は深く寝ちゃったみたいだ。今日も頑張ろうな】


【はい、頑張りましょう】

メッセージのやり取りをするだけで嬉しくなる。
この前までは必要な連絡以外できなかったけど、冬哉さんからのメッセージが届くようになって関係が変わったんだと実感した。
それに由那って書いてあった。
初めて呼び捨てにされた。
間違いであってほしくない。
これからもそう呼んで欲しい。

【そういえば、ぽんちゃんママに昨日の散歩を見られてて冷やかされました】

【本当?ごめん。でもこれからも手を繋ぐのが普通になるから見慣れてくるはずだよ】

その返信を見て顔が火照ってきた。
すると立て続けに彼からメッセージが届いた。

【ほっぺが赤くなった?】

【バカ!】

こんな気軽なやり取りを朝からして幸せな気分に浸った。
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