一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
「由那ー、今日一緒にご飯に行かない?久しぶりに焼き鳥食べに行こうよ」

「お兄ちゃん!また仕事中!」

だんだん小声でもなくなり、周囲も暗黙の了解となったが私はお兄ちゃんの緩さを許さない。

「焼き鳥に行くからちゃんと働いてきて!」

小声でそう返し、お兄ちゃんの背中を押した。
お兄ちゃんは嬉しそうに笑いながら階段を降りていった。

「木崎さんが可愛くて仕方ないのね」

「すみません。どうにも緩くて」

「いいのよ。外科はお兄さんと原島先生が背負ってるってもっぱらな噂よ。優秀な外科医の息抜きに来るぐらいなんてことないわ。それにお兄さんイケメンでナースの目の保養になるってみんな話してるのよ」

「え?イケメンですか?ガタイがいいだけですよ」

「そんなことないわよ。あなたと同じで目鼻立ちが整っていて、更にはがっちりした身体。話すとユーモアがあって、よく気がついて、さらには優秀となればナースが騒ぐのがわかるわ」

師長にそんなことを言われ驚いた。

「今は原島先生と人気を二分してるって聞いたわ。うちの病棟に来るようになって彼のことを知ったナースたちがさらに広めたんでしょうね。あなたが席を外してる時に来ると他のスタッフにも声をかけてとても気さくなのよ」

知らなかった。
お兄ちゃんって意外と人気あったのね。
私にはシスコンのような兄だけど世間にはそう思われてないのかな。
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