一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
家に戻るとキキが待ってましたと言わんばかりに玄関で座っていた。

「ごめん、着替えてくるからちょっと待ってて」

そういうと、さっと着替えだけ済ませ公園へと向かった。

公園に着くとちょうど彼もきたところ。でもジョギング姿でなくさっきの格好のまま。
キキもその様子に走ると思わなかったのか落ち着いている。

「今日はお散歩デートにしよう」

キキのリードを持ってくれると空いた手を握られる。

2人で他愛のないいつもの会話をしながら噴水の周りや林の間を歩き回った。
 
さっきまで一緒にいて、今もこうして一緒にいられることに幸せを感じる。

すると冬哉さんのスマホが鳴り始める。

「はい、原島です。あぁ、それなら様子見ていいよ。排液量と尿量に気をつけて見て。また何かあれば連絡して。あぁ、そうだな。じゃ」

「忙しいですね」

「そうだな。24時間対応しないといけないから。でもやりがいもあるんだ」

「そうですね。でもこういう姿をみるとやはり医者なんだと実感しました」

「そうだな。ま、普通の男なんだけどさ」

「フフフ。冬哉さんはどんなことしててもカッコイイですよ」

「由那にカッコイイと言われると素直に嬉しいよ」

そういうと掠めるようにチュッと額にキスをされた。
驚いて見上げると、口にもチュッとされてしまう。

「バカ!また見られちゃう!」

「いいじゃん。減らないし。それに誰もいないのを確認したよ。由那の可愛い顔を晒すわけにはいかないからね」

そんなことを言われ私は顔が火照る。

「ほら、そんな顔になった。誰もいなくてよかったよ」

もう!と思って冬哉さんを見上げるととても優しい顔をしていた。
手をギュッと握られ、もう何度目かわからないくらい胸の奥がキュンとした。

散歩を終え、いつものようにブランチに出かけのんびりとした週末を過ごした。
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