一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
冬哉さんから毎日メッセージが送られてくるようになった。

朝会えない日にはメッセージがくるし、夜会えない時には合間でメッセージをくれるとてもマメな人になった。

私も送るけれど冬哉さんは倍送り返してくれる。
会えない時間を埋めるように、今日あったことや些細なことを教えてくれる。

冬哉さんには外来診察も病棟の患者さんも診てるからとても忙しいはず。それに毎日のようにオペに入っている。

それなのに合間で連絡をくれる彼のマメさには頭が下がる。
ううん、私のことを考えてくれてるって思えて幸せな気持ちにさせてくれる。

お兄ちゃんは今でも暇さえあれば病棟にきて、私を夕飯に誘いにくる。

それを知った冬哉さんは、お兄ちゃんよりも先に私に声をかけようと階段で登ってくるようになってしまった。

最初こそ小さな声で話しかけてくれていたが徐々に慣れてしまい、まるでお兄ちゃんが2人になったかのよう。

最初のころは病棟に冬哉さんがくることをみんな驚いていたが、お兄ちゃんと仲良しの彼だから私との仲を疑うことなくすんなり受け入れてくれていた。

強いて言えば見た目の良い2人が入れ替わり立ち替わり上がってくるからみんなの視線を集めてしまい気が気じゃない。

「2人とも!仕事して。上がってこないで!」

2人がブッキングして会った時にとうとう私は宣言した。

「酷いよ、由那。ちゃんと働けてるのかお兄ちゃんは心配なんだよ。少しくらい様子見に来たっていいだろ」

「もう子供じゃないよ。ちゃんと働いてる。頑張ってる。お兄ちゃんは私を信じられない?お兄ちゃんに見守られないと出来ないように思ってる?私の仕事を邪魔しないで」

「由那!」

「冬哉さんも!私は仕事しに来てるんです。2人が暇な時間でも私は忙しいんです。ここは内科なんですから外科のドクターはお帰りください」

「由那!」

2人は私にピシャリと言われ、返す言葉もなく2人ともそのまま階段で外科へ降りていった。

後ろ姿を見るとかわいそうな気もするが、私はこの病棟を普段から1人で担当しておりみんなが思うほど暇な仕事じゃない。
目立つ2人が来ることで遊んでいるかのように見られるのでは無いかと心配になる。
きちんと仕事とプライベートは分けたい。

お兄ちゃんには妹離れしてほしい。
いくら久しぶりに日本に帰ってきたとはいってももう何ヶ月も経つんだから。

冬哉さんだって暇だとは思ってない。時間を見つけてきてくれてることはわかるけどプライベートと仕事は別!お兄ちゃんに感化されないでほしい。
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