一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
夜になり冬哉さんからメッセージが届いた。

【由那、昼間はごめん。つい時間ができて見に行きたくなってさ】

【お疲れ様です。今日はキツイこと言ってごめんなさい】

【いや、由那は間違ってない。俺にとって休憩時間でも由那は違うから。ついふらりと行ったらダメだった。ちゃんとそういうことを言える彼女を持って幸せだよ。今すぐに抱きしめたいくらい】

スマホを握ったまま固まってしまった。

【バカ!でも……私も会いたい】

【良かった。会いたいって思ってくれて。今、家の近くにいるんだ。出てこれない?】

え?
近くにいる?
私は慌てて窓の外を眺めた。
すると塀に寄りかかってスマホをしている男性を見つけた。
冬哉さん?

とても驚いたが、私も会いたかった。
冬哉さんの行動力には感服した。

【ちょっと待っててね】

そう言うとパジャマを脱ぎ捨て着替えた。
簡単にメイクをすると、ちょっと出かけてくる、とだけ家族に声をかけ私は外に出た。

「冬哉さん!お待たせ」

すると私をぎゅっと抱きしめてきた。

「ごめんな。でも由那が怒ってなくてよかった」

私たちは家の前から移動し、近くに停めてあった車の中に入った。

「由那は俺よりもずっと年下なのにしっかりしてるな。俺は由那を目の前にするとなんだかずっとそばにいたくて、囲い込みたくなるんだ。兄妹の健介にも嫉妬する」

手を握り、指を絡め合いながらいわれる冬哉さんの言葉に胸の奥がギュッと掴まれたように苦しくなる。

「冬哉さんはお兄ちゃんとは違いますよ。でも2人とも私を甘やかしすぎだし、心配しすぎです」

「由那がしっかりしてることは知ってるけど、構いたくなるって健介の気持ちがすごくわかるんだ。由那が可愛すぎて、心配したくなるし、見守りたくなる。本当に健介の気持ちが痛いほどわかる。だから今日こうして俺はここに来たけど当直の健介は今頃かなりのダメージを受けて使い物にならなくなってるだろうな。俺だって由那に嫌いと言われたらと思うと電話できなかった」

「そんなに怖かった?」

「由那に、嫌いって言われるんじゃないかと思うのが怖かった。怒った由那はかわいかったけどな」

「もーっ!」

私が冬哉さんを叩く真似ををすると、その手を掴まれ引き寄せられる。
私たちは目が合うと、そのまま唇を重ねた。

「由那、いい匂いがする」

「あ、もうお風呂入ったからかな」

「それもあるけど、由那の甘い癒されるような匂いだ」

首筋に顔を近づけられドキッとする。
耳の付け根を舐められ、ゾクゾクした。

「このまま連れて帰りたいけど、平日だから我慢するよ。明日はジョギングに行くからまた会おう」

私たちは何度もキスを重ね、やっと離れた時にはお互い笑ってしまった。

「なかなか離れられないな。由那の唇が俺を離さないから」

「もうっ!冬哉さんのイジワル」

ハハハ、と笑う冬哉さんはちょっと大人でイジワル。

手を繋ぎ、家の前まで送ってくれると帰って行った。
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