一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
病院へ到着するとさっきのおじいさんのことが気になるが、名前もわからない人の検索はすることができず私は通常業務に入った。

夕方になり、冬哉さんがおばあさんと一緒に病棟は上がってきた。

「木崎さん、こちらが今朝倒れた方のご家族の方です。お声をかけたいと言われご案内してきたんだ」

「あなたが主人を助けてくれたんですね。本当にありがとうございました」

おばあさんに深々と頭を下げられ、おじいさんの安否が確認でき、ホッとした。

「本当に良かったです」

そういうと涙が溢れてきてしまった。
嗚咽までこぼれてしまうと何事かと周囲からの注目を浴びてしまった。

「おじいさんは心筋梗塞でしたが、皆さんのおかげでなんとか助けていただきました。ありがとうございました。なんとお礼を伝えればいいのか分からなかったのですが、まずはお会いしたいとお願いしたところです。あなたが救急車を呼んでくれ、さらには心臓マッサージまでしてくれていたと聞きました。素晴らしい方に助けていただいて本当に良かったです。ありがとうございました」

「いえ、いえ……私はもう無我夢中で。でも助かって本当によかった……」

「今はICUに入っているがすぐにここの病棟に移れるだろう」

私はまたおじいさんに再会できると思うと安堵した。
あのまま死んでしまったら、と怖くて仕方なかったから。
なんとか涙を抑えながら、

「病棟に移動される日をお待ちしてます。早く元気になって下さいね」

声をかけるとおばあさんはまた頭を下げながら帰って行った。
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