一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
その後、病棟のみんなにも何事かと聞かれ説明をするとよく頑張ったねと声をかけてもらった。

「でも……心臓マッサージのやり方があってるかもわからなかったんです。本当に無我夢中でした。ガタガタと音が聞こえそうなくらい手が震えました」

「みんなそうだよ。でもやったからこそ助かったんだよ。そのまま見てたら救急車が来るまでは間に合わなかったよ。動けたのはすごいことよ」

とにかく助かったことに安堵し、私はなんとか涙を抑えながら仕事に戻った。

夜になり、冬哉さんからメッセージが届いた。
今日は当直のはず。

【由那、今朝は本当にすごかったよ。戻ったら心臓マッサージしてるから驚いたけど、すごい行動力だと思った。なかなか実践できないものだよ。ちょっと感動した】

【目の前で倒れられて本当に驚いたんです。でもこういう人を救う仕事についてる冬哉さんが誇らしかったです。冬哉さんが戻ってきた時、もう大丈夫だ、と思って。でも手も足も震えすぎて、今思うと恥ずかしい限りです】

【俺も由那が人を救う手助けをしていてちょっと誇らしかった。当直の後、そのまま勤務だけどその分帰りは遅くならないから夕飯一緒に食べよう】

【楽しみにしてます】

日に日に冬哉さんへの思いが募る。
今までよりもっとそばにいたい。
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