冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
冷徹弁護士と恋に落ちて
「芽衣、瞳孔が開いてる」
シーツの波間でじゃれ合い、至近距離で見つめ合う時、彼はいつもうれしそうにそう言った。
好きなもの、興味のあるものを見つめる時、人は自然と瞳孔を開いて対象物をもっとよく見ようとするのだと、私が彼に教えたからだ。
「至さんだって、開いてます。私を見つめる時はいつも」
私に覆いかぶさる彼の頬を両手で包み込み、したり顔で告げる。至さんはその整った目鼻立ちをくしゃっと崩して苦笑した。
「心理学のプロが恋人だと、隠し事ができないな」
「弁護士が恋人でも、隠し事はできません」
「それもそうだな」
クスクス笑いながら、瞳孔の開いた瞳で見つめ合う。互いの熱を理解して唇を合わせ、舌を絡めて吸い合う。
火照った素肌に彼の手が這い、中心を暴かれ、とろとろに蕩かされたところで、至さんと繋がった。
「芽衣……」
甘く掠れた声で名前を呼ばれ、たまらない気持ちで彼の首にしがみつく。
心理学の知識を駆使しなくたって疑いようのない、彼の大きな愛を一身に感じて。
あの時の私は、彼とともにある未来を、はっきりと思い描くことができた。このまま彼と幸せになるんだと、信じて疑わなかった。
けれど、彼には守らなくてはならない人がいた。私が存在すると、その人は心の平穏を保てない。
別れるのは、仕方のないことだった。
たとえ、至さんの子をこの身に宿していたとしても――。
< 1 / 223 >