冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
ぺこりと頭を下げ、草野は校内へ引き上げていく。
俺はあまりの衝撃でしばらく動くことができなかったが、校門の前にいた警備員が、まるで本物のストーカーを見るような目でこちらを窺っているのに気づき、逃げるようにその場を離れた。
人間の心は鎖につないでおけない。心変わりをすることだってある。
それくらい俺にだってわかっているが、あの心優しい芽衣がこの短期間でほかの男に心を移し、手紙一枚で俺との縁を切ったという事実が、どうしても受け入れられない。
しかし、手紙に書いてあった【体育の先生】は現に存在している。
……認めるしか、ないのか?
そう思えば思うほど、頭の中に芽衣と過ごした愛おしい日々が次々と駆け巡った。
出会いは婚活パーティー。大きな瞳が印象的な美人の芽衣は、最初から男性参加者たちの注目の的だった。
俺自身も彼女の容姿を綺麗だなとは思ったが、見た目以上に、彼女の纏うやわらかな雰囲気に惹きつけられた。