冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~

 これで、俺の役目は終わった。目的を達成してホッとした反面、これで芽衣とはまた離ればなれかと思うと、やるせない。

 会議室からひとり、またひとりと先生方が出ていく中、最後にもう一度芽衣と言葉を交わそうとゆっくり帰り支度をしていたら、俺の前にぬっと大きな人影がかかった。

「郡司先生、ちょっとお話が」
「草野……先生」

 ジャージ姿の彼が、俺を会議室の外へと促す。

 昔と同じく、芽衣の周囲を俺がウロチョロするのが気に食わないのだろうか。

 しかし、だとしたらなぜ芽衣は彼と結婚していないのだろう。芽衣によく似たあのかわいい娘の父親は、彼ではないのか?

 いくつもの疑問を抱えながら、草野に連れられて人気のない校舎裏へやってきた。

 草野はそこで俺と対峙するなり、ぺこりと腰を折る。

「観月先生を助けていただき、ありがとうございました」
「えっ? ……ええ。大したことはしておりませんが」

 いきなり礼を言われ、意表を突かれた。

 アンタのためにやったわけじゃないけど。と思わなくもないが、彼が芽衣のパートナーだとしたら、感謝されるのもそんなに変なことではない。

< 127 / 223 >

この作品をシェア

pagetop