冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
再出発に向けて
学校を出た私は、大通りを経由して保育園を目指していた。園の方には先ほど電話して、勤務先でのトラブルが無事解決した旨を伝えてある。
一時は失職することも覚悟したけれど、そうならずに済んだのは至さんのおかげ。
気が付いたら彼は会議室からいなくなっていたから、ちゃんとお礼を言えてないのが心残りだけれど……だからといって、改めて電話をかけるのは勇気がいるのよね。
先週、彼がうちで成優の子守をしてくれた時も、騒がしい胸をなだめるのに必死だったけれど、今日は彼の弁護士としての振る舞いが本当にカッコよくて、ときめくなという方が無理だもの……。
歩きながらこぼれるため息は、心なしかいつもより温度が高い。これから成優を迎えに行くっていうのに、母親の顔に戻れない。至さんはそれほど私の心をかき乱す存在なのだ。
別れてからも、ずっと……。
「芽衣」
もうすぐ保育園の門というところで、心に思い描いていた人の声が、私を呼んだ。
足元ばかり見ていた私が信じられない思いで顔を上げると、保育園の前に、なぜか至さんが立っていた。