冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
因果応報……?
父が反省の気持ちから言っているのはわかるが、同意しかねる。
そんなものがあるなら、弁護士はいらなくなってしまう。警察も、検事も判事もだ。
過ちを犯した者に報いを受けさせるのは、神や仏じゃない。法に携わる者が、公平な目で真実を追求し、その罪を裁くのだ。
「俺は確かに、あなたを恨んでいないと言ったらうそになる。しかし、病気は当然の報いだなんて思わない。治療方法があるのなら、治ってほしいと思う」
許すのは無理でも、病に苦しむ父を理不尽に責めたいわけじゃない。複雑な心境を正直に伝えると、胸につかえていた大きな塊がゆっくり小さくなっていくのを感じた。
父は驚いて目を見開き、徐々に涙目になりながら頭を下げる。
「至、ありがとう。その言葉を聞けただけで、もうこの世に思い残すことはない」
「……いや、まだ早い。遺言書を書くんだろう? 思い残すことはなくても、金は遺してもらわないとな。あ、相談料もキッチリもらうぞ」
自らの死を受け入れた父の発言が切なくて、わざと冗談で悪徳弁護士ぶってみる。それでも、父はうれしそうに目を細めていた。
塁もニヤニヤしながら俺たちの様子を見ていて、俺たちは奇妙な親子三人の時間を、しばしの間穏やかに過ごした。