冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
帰り際、また何かあれば連絡をくれと看護師の新沼さんに伝え、俺と塁は病室を出る。
外は日が暮れかけていて、ラウンジを通りかかった時には、窓から差し込む西日で目がくらんだ。
「そういえば、ここに短冊があるって言ってたな」
「短冊?」
視線を動かすと、壁の隅に飾ってある三本の笹が目に入る。それぞれに、色画用紙で作られた短冊が、いくつもぶら下がっていた。……父はなんと書いたのだろう。
「あった」
俺の声に反応し、背後にいた塁も近づいてくる。
ふたりで見つめる空色の短冊には、【家族の幸福】と書いてあった。
「家族って……俺たち?」
「そうじゃないか? 父の両親は他界しているし、兄弟もいなかったはずだ」
「ふうん。まぁ、兄貴は言われなくても幸せだよな」
からかうような目でそう言った塁に、俺は苦笑した。
「まぁな。お前には悪いけど否定しない」
「あ、けどさ、ちゃんと家で休ませてあげてる? 最近の芽衣ちゃん、疲れた顔してるんだ」
芽衣が疲れた顔を……? もしや、俺のせいだろうか。
家事や育児はできる限り協力しているつもりだが、成優が寝た後夫婦でまったりしていると、つい芽衣を求めてしまう日が多い。それで睡眠不足になっているのかも……。