冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
スマホで表示させていたマップから顔を上げると、周囲の家よりひときわ大きな邸宅が現れる。
門の脇のインターホンを押すと、『どうぞ』というお母様の声の直後、私の背より高い重厚な門扉が、自動で開いた。
ゆっくり深呼吸をしてから、敷地に足を踏み入れる。そして建物まで歩く途中、パッと明るい黄色が目に入り、私は思わず足を止めた。
「ひまわり……」
庭の一角につくられたレンガの花壇に、二十五センチほどの、背丈の低いひまわりが咲き乱れている。
至さんの誕生花だからと、お母様が大切にしているひまわり……。きっと、毎年欠かさず植えているんだろう。太陽の光を受け、まるで発光していているみたいに綺麗だ。
と、その時、三メートルほど先にある玄関のドアが開き、上品な濃紺の和柄ワンピースに身を包んだ婦人が出てきた。
髪型はすっきりとしたショートヘア。やせ形ですらりと背が高く、顔のパーツも至さんに似てシャープだ。
「こんにちは。よく来てくれたわね」
「お母様」
私は足を速め、彼女の前で「はじめまして」と丁寧に頭を下げる。
顔を上げると、お母様は柔和に微笑んでいた。