冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
「想像していた通りの、素敵なお嬢さんだわ。……どうして、あの時直接会って、確かめなかったのかしらね」
「えっ……?」
予想外の反応に呆気に取られているうちに、お母様は「中へどうぞ」と私を建物内へ促す。
リビングに通され、手土産のクッキーを渡すと、お母様は「紅茶がいいわね」と言って、いそいそとキッチンへ移動した。
私は背筋を伸ばしてソファに座りながら、室内をなんとなく見回す。家具はやわらかな風合いの木製が多く、それに合わせたカバーやクロスはどれも手作りに見える。
もしかしたら、今お母様が身に着けているワンピースもそうなのかもしれない。お母様は裁縫が趣味だったと至さんが話していたし……。
「お待たせしてごめんなさい。熱いから気を付けて」
「ありがとうございます」
お母様の手から、湯気の立つ紅茶のカップ、皿の上に美しく盛りつけた手土産のクッキーが、目の前のローテーブルに置かれる。
お茶の準備が整うと、お母様は右斜め前のひとり掛けソファに一度腰を下ろし、けれど思い直したように床のラグに膝と手をつくと、突然私に頭を下げた。