冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
今日、一番伝えたかったのはこのことだ。
至さんはもう、私の一部。彼を失うのは、体の一部をもがれるのと同じだ。
「……ありがとう。至は幸せね」
お母さまは瞳になみなみと涙を浮かべ、くしゃりと笑った。それにつられるようにして、私の目頭も熱くなる。
「今日芽衣さんを呼んだのはね、もちろん至と別れさせるためじゃなく、あなたに渡したいものがあったからなの。ちょっと待っていて」
気を取り直すように洟を啜ったお母様は、突然立ち上がってリビングを出ていく。
渡したいもの?
首を傾げつつもソファに座り直し、お母様の出ていったドアをぼんやり見つめる。
すぐに戻ってきた彼女は、その両手に白くてやわらかそうな布を抱えていた。
「本当は、もっと早くあなたに謝るつもりだった。でも、自分のしたことを思うと口先だけの謝罪なんかじゃ足りないって思ってね……。罪滅ぼしのつもりで、これを作ることにしたの。昔ほど指先が器用じゃないし、視力も悪くなってきたから時間がかかってしまったけれど」