冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
「あの、成優を迎えに行かないと」
「わかってる。帰ったら覚えてろよ」
最後にじろりと私を睨んだ至さんは、内にこもった熱を逃すようにため息をつき、私の腰から手を放す。
廊下を先にすたすたと歩きだした背中には拗ねた雰囲気が漂っていて、彼の方が年上なのにちょっとかわいらしい。
「至さん」
私は彼の元まで早足で近づき、その手をギュッと握る。立ち止まった至さんを見上げ、かかとを上げて背伸びをすると、その耳元で囁いた。
「……そろそろ、ふたり目が欲しいです」
至さんの耳が瞬時に赤く染まり、彼はつないでいない方の手で気まずそうに口元を覆った。
「芽衣、人が必死で理性を総動員している時に、その努力が一瞬にして吹き飛ぶようなことを言わないでくれ」
「至さんは欲しくないですか?」
「欲しいに決まってる。……なぁ芽衣、俺で遊んでいるだろう。そんなヤツは、こうだ」
至さんは廊下の壁に私を押し付け、強引にキスをする。
私たち、いつまでじゃれ合っているつもりなんだろう。自分たちのバカップル加減に呆れつつも、家族の控室に到着するまでの間、何度もキスを交わしては、幸せすぎる結婚式の余韻に浸った。