冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
愛あふれる家
「芽衣ちゃん、見て、十七年間の人生で初」
夏が過ぎ、新学期が始まってひと月ほど経ったある日、崎本くんが朝一番にカウンセリング室にやってきた。得意げに掲げた巾着袋の中身は、どうやらお弁当のようだ。
「もしかして、お母さんが作ってくれたの?」
「いや~、朝起きたらあの母親が台所に立ってるからビビったのなんのって」
ぶっきらぼうな口調で言いつつも、崎本くんはうれしそう。彼のお母さんとは夏前から何度かカウンセリングで話を聞いていて、母親として〝変わりたい〟という気持ちがあることはわかっていた。
まずは、少しの時間でもいいから崎本くんと会話をしてくださいと助言し、その頻度が少しずつ増えているという報告を私としてもうれしく思っていたら、とうとうお弁当を作ってくれるまでになったらしい。
崎本くんの表情も以前よりずっと明るく、今は国立大学の法学部を目指して、勉強に励んでいる。至さんとも時々連絡を取り合い、兄弟の絆を深めているみたいだ。