冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~

 弁護士の世界にヘッドハンティングがあるとは知らなかった。至さんの仕事ぶりが評価されている証拠といえるが、本人はあまりうれしくなさそうだ。

「金を稼げるに越したことはないが、俺が弁護士になったのは、法律を知らずにいるせいで苦しい思いをしている弱者を救いたいからだ。金も権力もある企業同士の争いや腹の探り合いには、あまり興味がない」

 なるほど、至さんらしい。納得していると、彼はさらに続ける。

「それに、国外のクライアントや海外拠点のオフィスとの打ち合わせが入ったら、時差で深夜や朝方にミーティングをすることもあるし、とにかく今より家族と過ごす時間が減ってしまうんだ。……成優、今よりパパが帰ってくる時間が遅くなったら嫌だよな?」
「うん、やだ」

 素直な成優は即答し、至さんも優しく頷いた。

「事務所が扱う案件の内容が俺の求めるものと合わないのも理由のひとつではあるが、実は俺も、家族と過ごす時間が減ってしまうのが単純に嫌でな。芽衣はもしかしたら不満かもしれないが、ヘッドハンティングは蹴ったんだ。どうか許してほしい」

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