冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
至さんは申し訳なさそうに言うが、私が不満に思うわけがない。
そもそも弁護士の収入の相場を知らないが、至さんは今の事務所ですでに私の倍以上稼いでいる。
それにお金のことだけでなく、ご両親の離婚で多感な時期に寂しい思いをした彼は、きっと家族というものに人一倍思い入れがあると思うから――。
「いえ、むしろうれしいです。私も、成優と至さんと一緒にいられる時間が一番幸せだから」
「ありがとう。きみならそう言ってくれる気がしていた」
夫婦で微笑み合っていると、成優が「ねえパパ?」と至さんに話しかける。
成優はそのまま至さんの耳元でなにか囁き、至さんはクスッと笑った。
「芽衣。成優がやりたいことがあるって」
「やりたいこと? なぁに?」
私が聞き返すと、成優は少しもじもじして言った。
「けっこんしきの、ちかいのキス」
一瞬、なんのことだろうと戸惑ったが、すぐに思い当たる。どうやらママとパパに挟まれて、サンドイッチになるのをご所望のようだ。
「ふふ、いいわよ」
「じゃあいくぞ、成優」
「うん!」
ギュッと目を閉じてキスを待つ成優の頬に、私と至さんはチュッと口づける。成優はきゃははっと笑い、身を捩らせて喜んだ。
お腹の子も、きっと楽しそうなお姉ちゃんの声を聴いて、わくわくしているだろう。
愛あふれるこの家がますますにぎやかになる日は、もうすぐ。
FIN