冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
私は臨床心理士の資格を持っており、それを生かして都内の私立高校・幾望学園のスクールカウンセラーをしている。
スクールカウンセラーはたいてい非常勤でいくつかの学校を掛け持ちすることが多いが、私は常勤の正規職員。
なんでも経営者の親族に心理学の専門家がいるそうで、幾望学園は生徒や保護者、職員全般のメンタルヘルスケアに注力している珍しい学校なのだ。
「心理学のプロなら、恋愛もお得意なんでしょう?」
不意に、難波さんが探るような目つきになる。柔らかな物腰はそのまま、ほんのり雄を滲ませて距離を詰めてくる感じに、彼の方こそ手練れだろうと予想する。
自分も出会いを求めているとはいえ、ちょっと苦手なタイプかもしれない。
「いえ、むしろ不得意でして……。だからこのパーティーに参加したのですが、やっぱりこういう場所で、そううまく理想の相手に出会えるわけもありませんよね」
難波さんの目を直視しないようにして、苦笑しながら話す。あなたも理想の相手ではありませんよと、遠回しに伝えたつもりだ。