冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
「どうして目を逸らすの?」
「えっ?」
「……怖いんでしょう、僕に溺れるのが」
耳を疑うセリフに、思わず難波さんの顔を凝視する。女性を落とすくらい赤子の手をひねるより簡単な仕事だとでも言わんばかりの、余裕たっぷりな微笑み。
確かに、怖い。もちろん彼に溺れることが、ではなく、その強烈なナルシストぶりがだ。
「あの、そろそろ別の方ともお話したいので、私はこれで――」
早口でそう言って彼の前から去ろうとしたら、腕をぐっと掴まれた。
ちょっと、こういうのはルール違反じゃないの?
このパーティーを主催する会社のスタッフに助けを求めようと視線を送るが、こちらの不穏な様子に気づいてくれる人はいない。
難波さんは腕を掴んだまま体を近づけてきて、生温かい息を交じらせて私の耳に囁く。
「ふたりで抜け出しませんか? 観月さんに、恋愛のカウンセリングをしてほしいんです。もちろん、相応の報酬はお支払いします」
彼を突き動かしているものがなんなのかは、心理学に精通していなくたってわかるだろう。
そう、答えは下心。この男、下心丸出しだ。