冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
「も、申し訳ありませんが、職場の学校では副業が禁止されていますので……!」
「そうやって断られると、ますます男の狩猟本能を掻き立てられるのを知っててやってます? なら、ご期待に応えますよ」
どこまでも自分に都合のいい解釈をする難波さんは、ねっとりと絡みつくような声でそう言うと、私の腕を強引に引いて会場の出入り口を目指す。
「ちょっと、待ってください……!」
抵抗しようにも、男性の力には敵わない。
難波さんが出入り口の扉に手をかけ、そのまま会場から連れ出されそうになった瞬間だった。
「彼女、嫌がっていますよ」
いつの間にかそばに立っていた男性が、冷静な声で咎めた。思わず男性の方を向き、清潔感のあるネイビーのスリーピーススーツを上に辿っていく。
そして男性の顔を見た瞬間、ドキン、と胸が鳴った。
無造作な動きを出した、黒髪のミディアムショート。左右に分けた前髪から覗く凛々しいストレートの眉、涼しげな奥二重の目、高い鼻梁に、輪郭のはっきりした薄い唇。
ここまで美しい男性を、私は未だかつて目にしたことがない。