冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
「どうしたんでしょう、あんなに慌てて」
「さぁ……」
首を傾げた草野先生同様、その場にいた職員一同が、呆気に取られて教頭を見つめる。
すると、ようやく呼吸の整った教頭は、なぜか私をまっすぐに見つめて言った。
「観月先生! 至急、学園長室へ来てください!」
「えっ? ……はい」
学園長が私を呼んでいる……?
慌てて箸を置き、お弁当を片付ける。
「観月先生、心あたりは?」
「ありません、まったく」
草野先生に聞かれて、即座に否定した。学園長からじきじきに呼び出されるなんて、初めての経験だ。
慌てふためいた教頭の様子から察するに、いいことで呼ばれたわけではなさそうだけれど……。
学園長室は最上階の三階、校門や校庭を一度に見下ろせる見晴らしのいい場所にあるので、とりあえず教頭についていき、階段を上る。
学園長は五十代の男性で、いつもニコニコしている人格者である。私が成優をひとりで産み育てることを相談した時も、迷惑な顔ひとつせず『元気な子を産んで、また戻ってきてください』と応援してくれた。
とはいえ、校長職も兼務する学園長は、学内の最高権力者。万が一怒られるような話だったらどうしようと、胃がキリキリと痛んだ。