『request』短編集
まだバスにも乗り込んでいないのにテンションはぶち上げ中の私。
そして更に、バスの座席発表でそのテンションをもっともっとぶち上がるような出来事が起きる。
私が勤めているこの会社はなんだか学生のノリ、みたいな感じが未だに抜けていなくて
そのためバスの座席なんてくじ引きで決めるというなんとも学生らしいことをする会社。
これでも大手企業ってところがギャップだよね!!
そして事前に引いていたそのくじ引きは、今になって発表されるわけで。
(………えっ。うそ。うそっ!!?)
『葵』の隣に『蒼空』の文字があるんですけど!!?
まさかのまさか。この1ヶ月ずっと願っていたことが叶うなんて。
そういえば朝の占いも1位だった。
(今日……わたしツイてる?)
神様に土下座で感謝を伝えたいくらいだ。
「葵ちゃん蒼空の隣なんだって?羨まし~」
「いいなぁ。私なんて課長の隣だよ?ネチネチとなんか言われそう~」
課長の隣は……嫌だな。
返す言葉がなくて私も蒼空さん同様「あはは…」と愛想笑いを浮かべる。
ただ、有難いことに「席交換して!」とは言われなくて安心した。
だって先輩に言われちゃったら譲ってあげないといけないだろうし…
「葵ちゃんならいっか~。蒼空からすれば妹みたいに見えてそうだし。抜け駆け考える心配もないね~」
グサッ
" 妹 "という言葉が心臓に突き刺さった。
だから代わってほしいって言われないんだ…
子供っぽくて安心安全の上原葵だから。
「あはは…」
二度目の愛想笑い。
分かってますとも…私が蒼空さんと釣り合っていないなんて。