『request』短編集
「……蒼空さん」
「ん?」
「…そっちに行ってもいいですか?」
そっち、とは
蒼空さんの隣の席。
2人がけのソファーに座る蒼空さんの隣。
「………、…いいけど」
許しを得て、
熱く火照ってるだろう身体を立ち上がらせて
その場所へと向かう────が。
「っ!ぎゃっ!!」
ツンッと何かに足が引っ掛かり、グラりと体制が崩れた身体。
バンッ!と、
身体を支えるために手をついた場所は
「……………」
「……………」
えっ…と……
またしても、やらかしちゃいました。
もはや壁ドンならぬソファードンといいますか、ソファーに座っていた蒼空さんの元に倒れてしまったわけでして。
手をついた先は、蒼空さんの顔横。
そして軽く乗り上げてしまった身体。
「……おい、葵」
至近距離で呼ばれる名前。
ドクンッ
心臓が射抜かれたように大きく音をたてた。