『request』短編集
「絶景じゃん!!写真写真っ」
景色が綺麗なこの場所でみなさんは携帯を片手に写真を撮り始める。
(つ、疲れた…)
普段なら余裕なはずのちょっとした山登りが、今じゃ息切れ+疲労+眠気の3点。
(椅子…座りたい…)
写真よりもベンチはないかと探し、近くのベンチに腰掛けた。
なんでこんなに眠いんだろ…
バスの中でいっぱい寝たつもりなのに。
「ふぁ~…」と変わらず出る欠伸。
少し肌寒いくらいなのに、身体はなぜかポカポカと温かい。だからかな?だから眠いのかも。
景色よりもボーッと空を眺めて
(今日で社員旅行も終わりかー…楽しみにしてたことって一瞬で終わっちゃうよね~…)
この社員旅行で少しでも蒼空さんに近づけたら、なんて。
行く前はウキウキしながらそう思っていたんだけど、もはや飛び抜けて近づいてしまったよね。
ソファードンとか初めてしちゃったし。
その中で
嫌でも思い出してしまうのは
『離れろ』
この一言。
(強く言われちゃったなー…)
嫌われたかな?
葵の教育担当降りるわ。
とか、言われちゃうのかな。
(それだけは……嫌だな)
蒼空さんとの繋がりを失くしたくない。
フラれようとも、私の教育担当は蒼空さんであって欲しい───。
「……あれ?」
周りを見れば、私以外誰もいないこの場所。
えっとー…置いてかれました?
完璧置いてかれてますよね、これ。
「もーやだ…」
やっぱり私はツイてない。
後を追うにもなんだか立つ気にならないし、とゆーかすっごく眠たいし。
なぜか未だに呼吸は乱れてるし。
「しんどいよ、もうっ…」
何もかも、疲れた。
ベンチに深く腰掛ける。
ズルズルと崩れていく身体。
遠のいていく意識。
(やっぱり、高いだけあって美味しかったなー…)
最後に思い浮かんだのは、
なぜかあのいちご大福だった。