『request』短編集
その後蒼空さんは課長に連絡すると言ってどこかに行ってしまい、隣の席には泉くんがいる。
「全部飲んじゃった」
「相当喉乾いてたんだね」
「今日唯一飲んだ物と言えば朝のお味噌汁だけだからかな~」
「…体調悪くなったの、水分不足が原因じゃない?」
「そうかも!!!」
「いや笑うところじゃないでしょ」
ケラケラと笑っていれば素早く泉くんからツッコミが入る。
「ほんと…心配したんだから。見つけたと思ったらベンチでぐったりしてるし、何事かと思ったら寝てるだけだし……………なに。なんか顔についてる?」
「いや……」
ジーッと泉くんの顔を見てしまっていたから、もちろん泉くんは怪訝そうな表情を浮かべるわけで。
「心配してくれたんだ、と思って。ほらっ、泉くんって私に心開いてくれてないと思ってたから…」
なのに心配して探してくれたんだ。
私の姿を見て慌ててくれたんだ。
「ふふっ」
「…何が可笑しいんだよ」
「えー?素直に嬉しいなって思っちゃって!」
「……………」
こうやって泉くんとちゃんとお話するの今日が初めてだし。
心を開いてくれてないと思っていたけど、心配してくれるなんて想像もしていなかったし。